日本臨床皮膚科医会
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皮膚の病気

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アタマジラミ症

 アタマジラミ症はアタマジラミという昆虫が頭髪に寄生・吸血されておこります。吸血時の唾液成分によるアレルギー反応でかゆみを起こします。かゆみには個人差があり、アタマジラミがかなりの数に増えるまで感染に気づかないこともあります。

 集団生活をする子供たちの間、特に幼稚園や保育園、小学校に通う小さな子供たちの間で流行することがあります。

写真1
成虫の顕微鏡写真

写真2
成虫の接写像

写真3
卵の顕微鏡写真

写真4
虫卵の接写像

写真5 頭髪に産み付けられた虫卵

 成虫は2〜4o、メスの方がオスより大きく、幼虫、成虫ともに吸血します。形は楕円形で扁平、色は半透明乳白色〜淡褐色です。1日数回吸血しますが、吸血時の痛みはありません。3対の歩脚を持ち、末端にはよく発達した爪があり鋏状となっており、毛髪を掴みすばやく移動することが出来ます(写真1,2)。成長したアタマジラミは、1日に3〜9個の卵を髪の毛の根本付近5〜10oに産卵します。産卵直後は透明で徐々に黄色っぽく色付き、孵化直前では褐色となります。
 虫がここから這いだして孵化を終えます(写真3,4)。また、卵はしっかりとセメント様の物質で頭髪に固着されています。ですから、頭髪の卵は簡単につまんで移動させることが出来ません、髪を振り払うことで脱落することもありません(写真5)。

 頭髪にいるアタマジラミは直接他のヒトの頭髪に乗り移って感染を広げてゆきます。幼稚園や保育園の子供は身を寄せ合って遊ぶことが多く、集団発生する主な要因だと考えられています。小学校での体育の授業でも頭同士が接近・接触することがまれではありません。さらに、帽子やスイミングキャップ、ヘアブラシ、タオルなどを貸し借りしてうつることもあります。

 治療はピレスロイド系フェノトリン(スミスリンパウダー®またはスミスリンローション®)という駆除剤を使います。フェノトリンは比較的人体への害が少ない薬剤(殺虫剤)ですが、あくまでも医薬品ではなく殺虫剤ですので説明書をよく読んで使用しなくてはなりません。

図1 アタマジラミのライフサイクル

 注意すべき点があります。虫卵の殻の内部へは殺虫剤が浸透しません。したがって、この駆除剤に“殺卵効果”は有りません。

 産み付けられた虫卵は10日前後で孵化して幼虫になります。孵化した幼虫は孵化後7〜16日は産卵しない・・・殺虫剤の使用ポイントがこのライフサイクル(図1)から導き出されます。つまり3〜4日間隔で週に2回、殺虫処理を行います、これを2週間続けます。殺虫剤処理は回数が少ないに越したことがありません。

 同時に、虫卵除去を殺虫処理と並行して進めてゆく必要があります。目視で十分に明るい光線下で頭髪に産み付けられている虫卵を探し、しっかり摘まんで丹念に取り除くのも大切な作業です。特に地肌から2cmまでに有る虫卵は新鮮でこれから孵化する可能性が高いと考えられます。この虫卵を除去することが治療上重要になりますので、丹念に虫卵を除去しましょう。駆除に手間取っている方は、アタマジラミ用の「梳き櫛」を併用することをお勧めします(通信販売でも入手可)。

 シーツや枕カバー、タオル等のアタマジラミは55度以上の湯に5分以上浸けてしまえば虫卵、幼虫、成虫すべて殺虫できます。是非、これらの手立ても講じてください。

 厄介なことに、最近ではフェノトリンに抵抗性を持ったアタマジラミの出現が報告され、その対策が求められています。

 予防としては、以下のことに注意しましょう。

  • 1)毎日丁寧に洗髪する、必要ならば大人が洗髪を手伝うこともお勧めします。
  • 2)地域、例えば幼稚園や保育園また小学校などで集団発生が有れば、その情報を早く伝達してあげましょう。
  • 3)シラミは肉眼で注意深く見れば発見することの出来る昆虫です。成虫で2〜4mm、虫卵は1mm以下ですが目視で十分確認できます。時々チェックしてあげてください。
  • 4)感染があやしいと持ったら、早期に皮膚科専門医を受診しましょう。

(愛知県支部 前田 直徳)


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